いわゆる五十肩は肩関節の周りの炎症で生じる疾患です。
症状
症状として特徴的なのは、
- ① 肩自身の痛み、肩甲部(肩の後ろ側)の痛み、肩から腕にかけての痛み
- ② 肩の動きが制限される。(可動域制限)
特に挙上および結滞動作(背中に手を回す動き)の可動時痛と可動域制限
の2点です。
五十肩の痛みの範囲は肩だけではなく、肩甲部や上腕・前腕にまで痛みがでることもよくあります。
ただし、肩や腕の痛みというのは、いろいろな疾患でも生じるものですから、より注目すべきなのは、肩の可動域制限があるかないかというところです。
原因
明確な理由は明らかになっておりません。
運動について
運動要素は運動不足も運動のし過ぎも原因としては考えられます。
運動不足は肩関節の固さを自然に生じさせます。
また逆に運動のし過ぎによる炎症および微小な怪我がきっかけとなる例も散見します。
また、例えば他の疾患などで入院治療されていた方で、点滴を入れていたりして、あまり動かせていなかった肩が、退院後に五十肩になるということは臨床ではよく経験します。
それらに加齢が伴って筋肉や関節が固くなった結果、また血液の循環が悪くなった場合に、肩関節の周辺で炎症や痛みを引き起こすとされています。
年齢と加齢が大きな要素であると考えられる
また、生活習慣やストレス、ホルモンバランスの変化が原因となる場合もあるとされています。
しかし、いわゆる10代~20代の若い人は肩の痛みが生じた場合もほとんど場合で医療機関で継続治療を要するほど痛みが長引いたり可動域制限が強くなることはなく、やはり年齢・加齢による要素は原因としてあると考えられております。
発症しやすい人、条件
五十肩は40代以上の人に発症しやすいという共通点があります。
ただし、男女間には差が見られません。
普段から猫背の人はリスクが高まるとされています。
姿勢が悪いと、体のゆがみが生じやすく、肩関節や筋肉の硬直や負担が大きくなりがちだからです。
加えて、生活習慣が乱れている人も注意が必要です。
睡眠不足やバランスの悪い食事などは血行不良を招いてしまい、五十肩のリスクを高めてしまいます。
治療
自然と痛みは引くものの、注意が必要
五十肩の痛みの特徴の一つは夜間痛です。
夜間痛は夜間就寝中に寝がえりなどで痛みで目が覚めてしまったり、ひどい人は痛みで寝られなくなる状態となることもあります。
五十肩の痛みだけに限って言えば、ある程度時間はかかりますが、自然と治まっていきます。
なので、痛みが引くことで治ったと思われる方がほとんどです。
肩関節の拘縮・拘縮肩
しかし、自然経過のみで正しい治療をしなかった場合、可動域制限が残ってしまいます。
この固まった状態を「肩関節の拘縮・拘縮肩」といいます。
通院治療をされていた患者さんの痛みのあった期間は平均で3~6か月程度であったというデータもあり、痛みが思ったより長期間続くこともよくあります。
その間に、動かせていないために拘縮肩へと移行していくことが知られています。
五十肩は症状の段階に合わせて治療を変えていきます。
痛みが強い時期(炎症期)
初期はじっとしていても痛みがあり、夜間痛が強くなることもありますので、この場合は過剰な炎症を引かせることに注力します。
抗炎症薬の内服・外用・必要があれば疼痛部位を狙いステロイド注射を行います。
それでも疼痛がコントロールできない場合は、ペインクリニックで行うようなブロック注射などの処置を要する人もいます。
しかしながら、ある程度の安静が必要ですが安静にしすぎると強い拘縮が残るというデメリットもあります。
つまり、少しでも疼痛をコントロールして、少しでも動かせる状態でいた方がよいということです。
痛みが弱くなってきたら(拘縮期)
痛みが引いてくる頃には、安静にしていた影響もあり、肩周りは固く硬直しています。
ここからは適度に患部を温めて、肩関節や筋肉をほぐしましょう。
肩を動かせるようになってきたら
痛みも治まり、肩を動かせるようになりますが、以前のような可動範囲ではないと思われます。
ここからは五十肩の可動制限を軽減していくために、リハビリテーション・運動療法をしていきます。
これには、程度にもよりますが数か月単位のある程度の時間が必要です。
普段からの予防と早期治療が肝心
五十肩の予防は普段から肩関節をやわらかく維持しておくことが重要です。
そして五十肩になってしまったら、できるだけ早期治療をすることが最終的な肩関節の拘縮の程度を軽減することも期待できます。
そして、痛みが引いてからも大事な時期です。
無理のない範囲で毎日ストレッチをし、可動域を広げ症状を改善することが重要です。
しかしながら、自己流のストレッチや無理にスポーツをつづけたりすることなどでひどくすることもあります。
肩の症状を感じた場合は、症状が軽くても早い段階で治療を開始したほうが良い場合もあるのでお気軽にご相談ください。
また、再び症状を悪化させないように、姿勢や食生活、生活習慣の改善にも取り組んでいきましょう。